新型出生前診断には、遺伝カウンセリングが重要だと言われています。
しかし、アメリカでは遺伝カウンセリングは新型出生前診断の結果、陽性の場合に行われます。
アメリカでは、新型出生前診断による中絶は60%程度で、諸外国、日本と比べて優位に低率です。
新型出生前診断を受ける前に、遺伝カウンセリングをすることで、不必要な不安を与えるのではないか。
あくまでスクリーニング的に行われる検査だから血圧を測定することと同じように知れば良いのではないか。
選択的中絶が増えるのは、検査結果後の充分なアプローチがないからではないか。
そう考えています。
ですから、新型出生前診断を受ける。
そして、陰性なら安心してお産に持っていく。
陽性ならば、そこで遺伝カウンセリングを受けつつ、羊水検査に進むなり、選択をしていく。
これが、諸外国で行われる新型出生前診断から見て学ぶことです。
大切なのは、じっくり考える時間を確保することです。
日本では、中絶期限が妊娠22週までと決まっていて、21週には選択しなければなりません。
こうした時間的負担も精神的な負担になると考えると、
やはり、出来るだけ早期に検査を済ませ、遺伝カウンセリングを数回行いながら、決断していくことが望ましいと思うのです。
著書「新型出生前診断の全てが分かる本」でも書いていますが、
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「遺伝カウンセリングに時間をかけるべきだ。」
というような意見も日本では根強くあります。
でも、その考えは確定診断ではないNIPTはそぐわないと思うのです。
血圧が高いことを知っておくのと同じで、お腹の子供の情報をもっと自由に知る権利が母親になる妊婦にはあるのではないでしょうか。
父も同じく、父としての責任があります。
NIPTを受けて、異常が確定した人の9割以上が人工妊娠中絶を選んでいるようです。
でも、中絶を安直に選ぶ妊婦は、居ないわけです。
中絶という方向を選ぶ人は、基本的には、子供を産んだあとのその子供の将来に対して非常に不安を持つから人工妊娠中絶を選んでいるわけで、人工妊娠中絶を選ぶことの批判をする前に、どういう風にしてその子供が社会的にサポートを受けるのか。
ということの指針をやはりハッキリと提示をするべきではないか、というふうに山村先生は思っています。
NIPTは、ほかの検査より早い妊娠10週前後から受けられるし、妊婦は安全です。
陽性が出た妊婦には、妊娠21週の中絶期限まで考える時間がどうしても必要だと思うのです。
たっぷり考える時間があるほうが、良いんだと思います。
そしてまた、どちらの方向を選ぶにしても、ある程度考える時間があって、夫婦でよく考えて、そして考えて、考えて考えた挙句、例えば中絶に向かっていってもそれは仕方のないような感じがするのです。
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子どもの将来を考える。
自分たち夫婦が亡くなってから、どのように生きていくのか。
こうしたことに夫婦は悩んでいるのです。
産んであげることは出来ます。
しかし、子どもが障がいを持ちながらも、周りの人たちと同じように楽しいと思える生活を送ってもらうのは、難しいものがあります。
社会として、あるいは染色体異常を持つ子を育てている夫婦の話など、
「こうやって育てていけば良いのですよ。」
「こういう社会的サポートを受けながらだったら、このような生活ができますよ。」
と提案してもらうことが大切なのです。
遺伝カウンセリングでは、そこまで話を詰めてすることは出来ません。
多くの妊婦さんが、新型出生前診断を望んでおり、予約が常にいっぱいだからです。
ただ、今のところ、こうやって育てていくんですよ。という1つのモデルを私としても提案することが出来ません。
社会的なサポートが充分でない上に、世帯によっては年収も大きく異なりますので、一概にこうして育てれば良いとは言えないのです。
この現状を見ると、遺伝カウンセリングを受けたからといって、中絶の数を減らすことは出来ないと思うのです。
やはり、夫婦が一番求めているのは、この子をどうやって育てていけば良いのか?
私たちが亡くなっても、この子が生活に不自由なく暮らせる保障はあるのか?
ここだと思うのです。
つまり、新型出生前診断が中絶を促しているのではなく、
産むという選択をしにくい社会が、日本にはある。
ということなのです。
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