未来の子供の産み分け

男の子がほしい。女の子がほしい。世の中の女性またはそのパートナーは、子供を授かることを心から願っています。しかし、授からないという現実を突きつけられたり、または、高齢や病気により子供を産みたくても産めないという方もいます。この価値観が多様化した現代において、子供がいることがマストではないし、結婚したからといって、子供を授からなければならないという呪縛にかかることも良くないことです。医療は、新しい命を望む人が望んだように産むことができ、新しい命を望まない人が、望まない妊娠、出産をしないように医療という側面から関与しています。そこで、今回は未来の子供の産み分けについて話をしておこうと思います。あなたは、体外受精という言葉を知っていますか?子宮内で卵子と精子が受精することで、受精卵としてそこから細胞がどんどん増殖していき、心臓が作られ、神経系が作られ、人という形を作っていきます。この過程で、子宮内での受精を試験管内で行い、受精卵を子宮に戻し、着床させる方法になります。晩婚化が進み、高齢出産が増えていますから、それに伴い女性ホルモンの関係で産みにくくなる方もいます。また、比較的若い女性でも、女性特有の病気によって産みにくく体になってしまった方もいます。では、「未来の子供の産み分け」とは一体どういうことか?今、体外受精の現場では、まず女性の卵子を5つくらい取り出し、精子と受精させるわけですが...

なぜ、日本に新しい医療が普及しないのか?

新型出生前診断。着床前診断。以前では、到底分かり得なかった胎児の情報、受精卵の情報を知ることが出来るようになりました。しかし、残念なことに日本では、まだほとんど普及しておらず、これから先も普及する可能性は極めて低い。なぜかというと、日本は「最新の医療」よりも、「倫理観」「コンプライアンス」を重視するから。もちろん、出生前診断で中絶が増えてしまうことは、私たち、社会全体で減らして行かなければなりません。しかし、そうした検査の結果を経て、起こしたアクションに対しては、「医療」や「科学」はとても介入できるものではありません。言い換えれば、スマホアプリをガラパゴス携帯で使おうとしようとすることくらい無理難題なのです。医療や科学の目的は、「社会を創生」することではなく、「人類を救う」ことにあるのです。では、諸外国を見てみよう。中国は、遺伝子治療の世界の最先端であり、ベトナムや台湾などは、日本のように厳しい法制度が無いため、「患者の望む医療」を提供しやすい環境にあります。そうです。日本で、先端医療がどんどん普及していかないのは、確実に法的な問題があるのです。例えば、iPhone8から始まったワイヤレス充電は、元々は日本人が作ったが、電波法によって使えなかった。だから、わざわざアメリカに持っていき、製品化して、結局日本は輸入することになった。本来は、輸出できるはずだったワイヤレス充電の技術は、「...

新型出生前診断を受ける場所選び

よくこんな質問をされます。「どこで新型出生前診断を受けたらいいですか?」今日は、その質問に答えて行きましょう。まず、新型出生前診断という検査を受けることだけでしたら、どこでも良いと思います。日本で行われている検査は、海外の検査機関に送られたりして、判定が出ます。この検査の精度自体に大きな差はありません。どの検査機関でもそれ相応の偽陽性(陰性の可能性あり)は起こります。また、採血をして検査にかけるわけですが、母体の血液中に含まれる胎児の胎盤の細胞が含まれない、または不足している状態であれば判定はできません。ですから、検査自体はどこでも構いません。次に、遺伝カウンセリングを受けたい場合です。これは、遺伝カウンセリングが行える専門医がいますから、そうした新型出生前診断の認定施設を選択するべきでしょう。ただし、そういう施設は予約がパンパンで、希望日に受けることは難しい場合があります。そして、夫婦揃って遺伝カウンセリングを受けることが原則ですので、ご主人が仕事で忙しい場合、遺伝カウンセリングの情報は妊婦さんしか直接聞くことができません。ご主人にも聞いてもらったほうが、夫婦で検査に対して考えることができるので、遺伝カウンセリングの際に録音しても良いか?尋ねてみてはいかがでしょうか?第三者に情報を流すわけではないので、大丈夫かと思います。では、検査も遺伝カウンセリングも手早く希望の日に受けたいと...

抗がん剤が効かない?!

ガン治療には、抗がん剤。しかし、がん細胞は脅威の強度があり、言ってしまえば鉄壁の守りを固めているので、抗がん剤が効かないケースがあります、一体、どういうことなのでしょうか。著書「世界中のガン研究から学ぶガン治療のいま」よりーーーー医療の現場に痛感させられることは、化学療法を行なっている最中に、 「全く治療効果は出ないのに、副作用のみ必ず発現する症例。」 「少し有効に思えたのに、すぐ無効になり、ガン増殖が勢いよく起こる症例。」 こういうものが多数あります。 細胞には、細胞膜といって物質を選択して通過させる機能を持っていますので、化学療法では、抗がん剤を細胞膜に通過させて細胞内に入れ込む必要があります。上記のような症例の場合、ガン細胞の細胞膜は、正常な細胞の細胞膜より、化学療法剤の通過をさせにくくしていると考えざるを得ない場合があります。その原因はコレステロールの含有量も高くし、細胞膜の硬化が起こっているようです。また、ガン細胞内に運良く入り込んだ化学療法剤は、ガン細胞の細胞死を起こすと同時に、その細胞内の内容物をポンプ作用で、細胞の外に送り出してしまうので、ガン細胞がやられる前に周辺の正常な細胞がやられていくという形になるのです。ーーーーつまり、抗がん剤の副作用というのは、がん細胞が抗がん剤から逃れられた場合でも、がん細胞が死んだとしても起こるということ。恐るべきがん細胞の正体を知っ...

風疹症候群とは、

平成30年、風疹にかかった患者さんが、2000人を超え、5年ぶりの流行となっています。特に女性の場合、妊娠中に風疹に感染すると、胎児に影響を及ぼします。そこで、風疹症候群とはどんなものなのか?著書「産婦人科で聞きづらい妊娠の医学」から抜粋しておきます。ーーーー妊娠中の風疹感染に伴う胎児奇形について Q・・・第一子が風疹に感染しましたが、私はまだ感染していません。 風疹は妊娠中に感染すると奇形があると聞きました。 現在妊娠6ヶ月ですが、中絶した方が良いのでしょうか。 A・・・最近、風疹による胎児奇形を心配して来院される妊婦が多いようですが、現在は妊娠初期の検査で、ほとんどの人は風疹に罹患したことがあるか否か検査を受けておられます。 この風疹罹患の有無の検査で風疹抗体価が8倍以上ある人は以後風疹で発病することはありません。 あなたの場合には妊娠初期にこの風疹抗体価が8倍未満ですので、まだ未感染であったようです。 先天性風疹症候群という風疹ビールスによる奇形の発生を心配しておられるようですね。 先天性風疹症候群というのは妊娠初期に風疹に未感染の妊婦が始めて風疹感染を起こしますと、胎児の眼、耳、心臓に障害を残すことを言います。 眼は主に白内障、心臓は大動脈開存などの心奇形、耳は聴力障害を生じます。 妊娠初期で特に妊娠2ヶ月以内の顕性感染では50%、妊娠3ヶ月未満だと20%...

知識は、三文の徳

著書「世界中のがん研究から学ぶガン治療のいま」からーーーーガン細胞を生み出す3つの要素を考えなければなりません。 遺伝子に傷を与えない。 免疫力の低下を防ぐ。 低酸素、低温状態を防ぐ。 これに加えて、食生活の乱れ、運動不足、体を冷やすような習慣、ストレスから来る血流低下などは発ガンに繋がって行きやすい。社会の活動が複雑化して、夜間勤務などを行なっている職員の方もおられます。やはり、社会を維持する以上仕方がない勤務労働形態だと思います。しかしながら、ヨーロッパなどでは夜間勤務などを行っている医師、看護師さんはガンが発病してくると、労災で治療に専念してもらうということを国の補助として行っています。そういうふうな夜間勤務が、当人に多大なストレスを与える。これが発ガン性を高めるという考えを持っておく必要があると思います。ーーーーこう考えると、ガンというのは現代病に近いものかもしれません。生活習慣病が引き起こす病気だと認識してもらうと良いかと思います。

みんなと違うこと。あなたに合うこと。

著書「ガンのオーダーメイド医療」からーーーーこのようにガンの治療は基本的な方向付けとしては、個別化医療を行っていく。オーダーメイド医療を行っていく。ことになりつつあります。そして、その治療成績を向上させるためには、プレシジョンメディスンの確立が必要なのです。 今の標準的な治療で、治療成績が上がらなくなっているということは、多くの人が自覚していることだと思います。 そこで、患者さん一人ひとりのデータに基づいて適切な治療方法の決定をして、もちろん同意を得て、行っていくことがまさに始まっています。 最近では、NHKの番組で免疫治療はほとんど役に立たない。高い医療費を取っているだけである。というような批判的な治療の説明がありました。 これは、時代に逆行した標準的治療で満足しろと言っているような内容でした。 現時点で、ガン治療の体制や方針は標準的治療に向かっていません。 そのことをよく考慮して、より良い医療を患者さんに提供することが医療現場でとても大切だと思います。 ーーーー

ガンになる前に食事を改める。

著書「ガンのオーダーメイド医療」からーーーー先生は、患者さんの声の調子が初めと比べて、良くなった感じがしました。そこで、先生は食事について話をすることにしました。 「温熱治療の話をまとめますと、温熱治療は基本的に副作用がない。 それから保険でできる。それから患者さんがやらなければならないことがない。 そういう意味合いでは、患者さんの負担は少ないです。 ここで、一つお願いしたいのが、家庭で食事療法というものをやってほしいのです。 PET-CTを先程撮られたと言いましたが、これはブドウ糖というものを注射します。 これは、なぜブドウ糖を打つのか聞かれましたか?」 『あ、はい。聞きました。ガン細胞は糖質が大好物だからですよね?』 「そうです。あなたもガン細胞が増殖するのを抑えようとすれば、要はブドウ糖を食べてはいけないということです。 ブドウ糖というのはどういうものか分かると思いますが、糖に変化するものはグリコーゲン、デンプン、炭水化物などです。 だから、砂糖を入れて紅茶を飲むだとか、コーヒーを飲むということは辞めないといけませんね。 砂糖は、もちろんですが、食べるもの。ごはん類が多いだとか、麺類が多い、こういうのも気をつけてください。 食べるものは、ご飯を除いたおかずを食べていく感じです。 大丈夫ですか?理解出来ましたか?」 ーーーーガン患者さんの食事で気をつけることは、糖尿病患者...

ガンの温泉療法は、効果があるのか?

巷に溢れる「ガンの民間療法」には、医師から見て「科学的根拠がない」ものもたくさんあります。しかしながら、現代の医療を持ってもガン治療は難航するものです。今回は、温泉療法がガンに本当に効くのか?についてお話ししましょう。著書「ガンのオーダーメイド医療」からーーーー温熱療法は、「温泉に入るのと同じなんでしょ?」と聞かれますが、温泉に入るのとは違うんですね。このサーモトロンという機械にかけて、ガンの病巣に上と下から電極を当てて、腫瘍の部分だけ42℃くらいになるわけです。 お風呂に入るときは、首から下が浸かっているだけだから、全体が42℃くらいになりますが、腫瘍のところはそこまで温度が上がらないのです。 どうしてかというと、皮膚の表面はお湯の温度に近いのですが、中にまで温度が届きません。 そして、風呂に入っている間も息をして心臓は動いているので、どんどん血液は循環します。 その血液の温度は、その時点で下がるので、必ずしも身体全体が42℃になってあるわけではありません。 コタツに入るということも、同じく違うので治療には温熱治療にはならないと考えてください。 ですから、温熱治療は腫瘍の部分だけ温度を上げる、腫瘍の部分だけ温度が上がらないといけないのです。 こういう治療というのは、ガンの周りに栄養血管というのが伸びてきて、体から血液中の栄養をもらってガンはどんどん大きくなっていくわけですが、その...

頭を抱える医師

新型出生前診断は、どこでも受けられるわけではありません。認定施設で受けることを推奨しています。では、なぜこんなルールがあるのでしょうか。著書「新型出生前診断の全てが分かる本」からーーーー平成25年3月9日に日本産婦人科医学会が、母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の指針を公表しました。厚生労働省、母子・保健課課長からも、母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の指針について通知されています。これは、妊婦さんが検査やそれに関連する赤ちゃんを正しく理解して、自分の意思で検査を受け、検査を受けることに不利益を被ることがないようにするためです。その通知の中には、検査前後における専門家による十分な遺伝カウンセリングにより、検査を受ける妊婦やその家族などに検う限界について正確に理解していただく必要があるとしています。検査を受けることが出来る妊婦については、一定の条件を定めることが必要であり、そのためには学会関係者に限らず、検査に関わる全ての学術団体、医学研究機関、医療機関、臨床検査会社、遺伝子解析施設、遺伝子解析の受託会社、健康関連企業との皆さまにも学会指針を尊重して、妊婦の検査を受けることが必要だと記載されています。ーーーー妊婦さんには、自由に受けていいよ。でも、しっかり遺伝カウンセリングを受けてね。という感じがします。しかし、新型出生前診断を提供する医療機関は、妊婦さんにこの検査を勧めては...

遺伝カウンセリングは必要?

著書「35歳で妊娠が分かったら読む本」からーーーー山村先生は、日本の認定施設でNIPTの検査を受ける、あるいは認定されていない非認定の施設で受ける両方の方法があることを説明しました。 非認定の施設で、だいたい18万円くらいの費用がかかり、その指定のクリニックで採血を受けて、その検体をアメリカ、イギリス、スペインなどに送られています。 2週間後に検査データが出てきて、この検査の精度は極めて高くてほぼ100%の確率で異常の有無が分かるようになっています。 ここで疑問になるのは、認定施設と非認定施設の違いです。 医療的または医学的な差はありませんが、認定施設では専門のカウンセリングを行える遺伝専門医という先生がいて、そういう先生が相談に応じてくれます。 非認定の施設では、検査をするのみです。 ですから、非認定の施設での検査で異常を指摘された後に、そのまま中絶行為に走る妊婦もおられると思います。 それから、異常を指摘されたがあくまで検査としてはスクリーニング(前段階)の検査なので、確定診断をするための検査を行っていくわけです。 その確認の検査というのが、羊水検査です。 ーーーー認定施設でも、無認定施設でも検査自体の差というものはありません。つまり、検査自体はどこで行っても結果が大きく異なることはないと考えることができます。そもそも、遺伝カウンセリングを行う意味とは何でしょうか...

妊娠は病気ではない。

20世紀は、感染症で亡くなる方が多い時代でした。そのため、医療の目的は、命を救うことだとされてきました。今でも、命を救うために存在していますが、立ち位置が少し変わってきました。今では、セカンドオピニオンやインフォームドコンセントといった患者が安心して、望む治療や検査を受ける選択が重要だとされています。しかしながら、新型出生前診断において妊婦がこの検査を希望して受けたとしても、社会的な批判が巻き起こっています。ここでは、社会という側面ではなく、医療の目的という側面から見ていくと、そもそも、妊娠は病気ではないということが、前提にあります。ですから、医療の立ち位置の変化に対応するということは少しあり得ないのです。妊娠に関する費用は、国民保険や社会保険では保証されていませんから、その代わりに、手当て金として補助金という形で支給されます。その妊娠中に何らかの病気が見つかった場合は、保険で保証されるわけですが、ここで胎児に何らかの病気が見つかる、例えば新型出生前診断をして染色体異常が見つかる。この場合は、まだ胎児の遺伝子治療は研究段階ですので、医療の目的である命を救う、病を治すということは難しいのが現状です。しかし、妊娠という現象は、病気ではない。妊婦さんに病気が見つかれば治療ができる。胎児の場合は、産まれてこないと治療ができない。お腹の中で治療をすることができないこと。これが、選択的中絶の原...